LIFE Cook

人生を豊かにするために(料理ブログではありません)

ヨーロッパの会社に転職して1年を経て

はじめに

今年の1月から外資テック企業で働いている。

外資テックといってもGAFAMを代表する米BIGテックではなく、ヨーロッパの企業だ。 これまで日系企業で働いてきた身としては、カルチャーショックとまではいかずとも、企業文化の違いや入社前のイメージとのギャップなど思うところはある。

企業によって文化は異なるだろうし、これが全ての外資系企業にあてはまる訳ではないだろうが、 この1年を振り返ってそれらをまとめておこうと思う。

外資で求められる英語力

ここが一番気になるところだろう。 はっきり言って、必要な英語力は日系企業で求められるものとは段違いだ。 これまで自分も英語には力を入れてきたが、まだまだスムーズなコミュニケーションするにまで至っていないと思っている。

現在の会社では日本オフィスのほとんどの社員が、海外オフィスのマネージャーの下で働いている。 仕事の進捗報告や面談などもちろん英語だ。

英語の使用頻度が高い分、英語の発音なども全体的にレベルが高い。

自分が以前働いていた日系製造業だと、英語でのコミュニケーションはできるものの、ものすごいカタカナ英語で話す上司がいた。 今は英語の話者でも、インド訛りやアジア訛りなど様々なので、発音の違いをあまり重要視していなかったが、その甘い考えを改めさせられた。

開発体験

開発環境それ自体は日本とそれほど変わらず、相変わらずJIRAのカンバンでアジャイル開発をやっている。 それでも文化の違い?で思うところを挙げてみた。

外資のエンジニアはコードを書かない?

Amazonエンジニアの話でコードを書くことがほとんどないと聞いたことがある。

blog.riywo.com

www.youtube.com

少し前には、Googleのエンジニアが本業の仕事をほとんどしないで、副業ばかりやっているような話も話題になっていた。

あるZ世代のエンジニアは1日1時間働いて年収2000万円…グーグルの「フェイクワーク」の実態 | Business Insider Japan

非常に勝手な想像で申し訳ないのだが、おそらくこれはコードを「書かない」のではなく「書けない」のだ。

考えてもみてほしい。 外資系企業に入社してまず携わるプロダクトは、新規事業にジョインしない限り、ローンチしてから長く運用されているような製品になる。 それもこれまで海外の優秀なエンジニア達がバリバリコーディングしてきたような代物だ。 コード量もさることながら、機能も満載で、新規参入者がちょっとやそっとでいじれる状態ではない。

実際、私が扱っているプロダクトも、スパゲッティコードとは言わないが、クラスが多すぎて恐ろしく複雑になっている。 幸い、日本向けの機能を中心に開発に参加できてはいるが、アグレッシブに大きな改良を加えているのは3~5年のベテランエンジニアばかりだ。

そうなるとスタートアップで働いた方が、初期からプロダクト開発ができるので、スキルアップにつながるしコードの理解も早いだろう。 フェイクワークが横行するのもこういった背景だろうと推測する。

ちゃんとPMがいる

これまでもアジャイル開発はやっていたが、Poduct Manager(PM)は見たことがなかった。 今ではベンチャー企業を中心に日系企業でもPMという職種が増えてきてはいるようだが、 基本的にPMにあたる仕事はProject Leader(PL)かエンジニアリングチームのリーダー、ないし課長などのマネージャーが担当しているのが一般的だった。

これに対し今の会社ではPMがいて、開発方針のかじ取りを行っている。 開発項目の優先順位は基本的にすべてPMが決めるので、エンジニアはPMの指示に従って開発を行うことになる。

現地法人からするとこれが厄介なところで、 日本向けの機能開発の要望を出しても、PMによって却下されてしまうことが多い。

ただし、これが日本ではPMという職種が成立しない理由だとも思っている。 よく「Noと言えない日本人」と揶揄されるように、日本のサラリーマンは顧客や上司からの要望を却下できない。 しかし、PMはプロダクトのコンセプトを考え、必要なら要望を却下しなくてはならない職種だ。 そういう意味では、プロダクト・マネージメントがちゃんと機能した、正常なアジャイル開発が行われているとも言える。

Noを伝える技術 #pmconf2021 - Speaker Deck

Brilliant Jerkのような輩がいない

これまで働いてきた会社では、相手を論破してマウントを取るのが好きな社員を見ないことはなかった。 こういう優秀だが周りに悪影響を及ぼす人を俗にBrilliant Jerkというのだが、現在の職場ではそのような人は全くいない。

理由としては、インターナショナルな環境のためだろう。 私が所属する開発チームはドイツのベルリンが本拠地だ。 ベルリンは国際的な都市として有名で、国外からの移住者が多い。 実際、チームメンバーのほとんどがドイツ以外の国からの出身だ。 様々な価値観を持ったメンバーが協力して働いているので、相手を論破して意見を押し付け合うということは無いのだろう。

コミュニケーションはチャット

では、ディスカッションはどうやって行われているのかというとチャットだ。

ベンチャーではチャットの利用がメインだが、日系大企業だとまだまだメールが主流だ。 理由はいかなる時もメッセージのやり取りが証拠として残るメールの方が安心なためだろう。

しかし、今の会社のコミュニケーション基盤は完全にチャットになっている。 メールでメッセージを送っても見てもらえず、チャットでないと返信が来ないときすらある。 これには大いに助かっていて、英語での口頭のコミュニケーションができなくても、チャットで文字ベースのコミュニケーションができるので何とかやれている。

また、他部署の人と気軽に会話できるのも大きな利点の一つだ。 聞きたいことがあれば、担当者を見つけて、"Hi ○○! Could you tell me ~?"といった感じで気軽に質問できる。

ずいぶん前の話だが、以前働いていた会社で、コードレビューの依頼を他部署に異動した担当者に、ミーティングを設定する形でお願いしたことがあった。 しかし、このときこっぴどくお叱りを受けた。 いきなりミーティングを設定するのではなく、まずメールで確認を取ってからミーティングを設定するのがマナーだというのだ。

この頃はSlackなどのチャットアプリが登場する以前だったという背景もあるかもしれないが、今の会社は社内の風通しは段違いだ。

職場の雰囲気

エンジニアリング以外についても書いてみる。

どちらかというと営業がメイン

ソフトウェアエンジニア界隈で外資の高年収がしばしば話題にはなっているが、実際には日本での開発者の採用枠はそれほどない。 今の会社でも開発者として採用されているのは自分だけだ。 基本的にプロダクト開発は、海外の開発拠点で行われている。

そのため、日本オフィスをはじめとする現地法人での主な業務は、現地の顧客への営業やマーケティング、カスタマーサポートだ。 これはうちの会社だけかもしれないが、面白いことに、その営業やマーケティングの担当している社員のほとんどが元エンジニアだ。 そういうバックグラウンドもあって、製品の訴求を上手くできているのかもしれない。

年齢層は高め

社員の年齢層は正直、高めで、40~50代がほとんどだ。 全て中途採用なのと、英語を流暢に話せる人材となると、帰国子女でもない限り英語の習得にそれなりの時間と労力を積んできた人材に限られるからだろう。

プレゼン資料はとにかくシンプル

以前働いてた会社では、プレゼン資料はとにかく情報が詰め込まれたものが好まれた。 完全にプレゼン資料のセオリーのアンチパターンを行っているのだが、図の上に図を重ねたり、無駄に複雑なフローチャートを載せたりとひどいものだった。

しかし、現在はプレゼン資料はとにかくシンプルだ。 箇条書きの文字だけスライドもざらに見る。

一番衝撃だったのが、タイトルしか書かれていないページを前にプレゼンターが何分も話し続ける場面を見たことがあった。 これは極端な例だったかもしれないが、基本的にこちらの社員は資料に書かれている内容をそのまま読むようなことはしないようだ。

日本では、資料に書かれている内容をそのまま読まないと、「それ、どこに書いてあるんですか?」なんて質問が飛んでくる。

ザ・グローバル企業

これは言語が英語だから成し得ることなのかもしれないが、社内のウェビナーや全体集会はアジア、ヨーロッパ、アメリカ圏といったエリアごとに行われる。 エリアごとに行われるのは時差の問題や法律の違いも理由としてあるのだろう。 開発拠点も分散している。 機能やレイヤーごとに、ドイツのベルリン、フランクフルト、インドのムンバイ、アメリカのシカゴといった感じだ。

以前働いていた会社もグローバル企業を自称していたが、こういったアナウンスはせいぜい部署か部門単位だった。 まず国を跨いで行われるようなことはないだろう。

おわりに

どちらかというとポジティブなことばかり書き連ねてしまったが、 今の会社でもキャリアの不安はあるし、辞めていく人も度々目にする。 基本的な社内システムなどは、むしろ日系企業の方がよくできていたりもする。

とりあえずクビにならないように、2025年も頑張っていきたい。