はじめに
2023年の一年間は副業を始める機会に恵まれ、12月をもって終了しました。
本業では大手の自動車部品メーカーでソフトウェアエンジニアとして働く傍ら、 スタートアップでもクラウドサービスのバックエンドエンジニアとして働き、 とても貴重な経験を得られたと思っています。
副業関連の記事は既にたくさんありますが、それでもサラリーマンの副業経験者は全体の1~2割程度! まだまだマイノリティーですので、私の体験談をまとめておきたいと思います。
自分のこれまでのキャリア
これまで日系の大手製造業で10年あまりソフトウェアエンジニアをやってきました。 内訳は家電メーカーで8年、自動車部品メーカーで3年になります。
- 2012: 家電メーカーに入社
- 組み込みエンジニアとしてキャリアスタート
- 2016: Web系エンジニアに転向
- 会社が立ち上げたジョイントベンチャーに出向
- 2018: 新規事業の立ち上げに参加
- AWSに触れる
- 2020: 自動車部品メーカーに転職
- Webアプリ開発、データ分析、リーダー業務など
- 新規事業のPoC活動
家電メーカーの方では、社内転職制度が充実していたこともあり、 組み込みソフトウェア・エンジニアからWeb系エンジニアに転向、 会社が立ち上げたジョイントベンチャーで働く機会にも恵まれました。
副業をはじめたきっかけ
副業について調べ始めた
2022年に副業をやってみたいと思い、いろいろ調べていました。 Offersなどの副業マッチングサービスに登録して、いくつかの企業とカジュアル面談をしたこともあります。
しかし、当時はこれらのサービスを通して出会えた企業が求めていた人材像は、
- 週5日コミットしてくれること
- 将来的に正社員になることを念頭に、まずは副業でジョインしてもらえること
を条件としていました。
あくまで本業の仕事をキープしつつ、 それ以外で自分のエンジニアリングスキルを試したい、収入の手段を増やしたいと思っていた自分にとっては受け入れがたい条件でした。
また、副業について調べつつも、週に数日働くだけで十分な成果を出せるかを懸念していました。 本業での経験からエンジニアの仕事が少ない稼働時間でこなせるものだとは到底思えませんでした。
知人からの紹介(結局は人脈?)
そんなことから半ば副業を諦めかけていた時、知人から副業をやってみないかと紹介を受けました。
副業を紹介してくれた知人は元々ベンチャーキャピタル関係の仕事の経験がある方で、 関わっている会社の同僚が起業して、エンジニアを集めているということでした。
事前情報として、起業メンバーもいい人たちだと聞いていたので、安心して参加することができました。
副業を通して得られたこと
副業を始めるにあたっての手続きや準備については割愛します。
自身のスキルが本業以外で通用することを実感
晴れて個人事業主となり、紹介していただいた企業と業務委託契約を結びました。
私は週8時間で契約を結びました。
既に書いたように週8時間で成果を出せるか非常に不安でしたが、 幸い開発対象のサービスがReact/Material-UIでこれまで何度となく開発してきた構成でした。
稼働時間が少ないため、ある程度割り切って、最初は不具合修正から着手。 自分がこなせるタスクを見積もり、できない部分は初期解析結果や必要な手順を明らかにして、他のメンバーに引き継げるようにしました。
プロダクト開発が次のフェーズに入り、開発体制を刷新する段階になって、人手が足りていなかったバックエンドチームに参加。 元々、バックエンド開発の経験を充実させたかったため、願ったり叶ったりでした。
そこでも、本業で触っていたAWSのIaCやTensorflowの知識を活かすことができ、プロダクトの実現に貢献することができます。
こういった成果が出せた背景は、契約した企業がSlackやタスク管理ツールを使った情報伝達の基盤を確立してくれていたこと、 中心になって舵取りをしてくれるエンジニアがいたおかげもありました。
それでも、今回副業を終えるにあたって、少ない稼働時間で成果を出せた点については高く評価していただけました。 自分にとっても大きな自信につながったと思います。
フリーランスエンジニアと交流できた
優秀な方と仕事ができたことも大きなメリットだったのですが、 コロナ禍を経て自由な働き方をしているエンジニアと知り合うことができたのは大きな収穫だったと思っています。
今時のスタートアップではよくあることなのかもしれませんが、所属するエンジニアのほとんどが副業で参加していました。 その全員がリモートで開発をしており、中には沖縄や長崎に移住している人もいました。
私自身は製造業で働いてきたこともあり、完全にリモートで働くというのは想像しづらかったです。 特にハードウェアが関わる仕事になるとまず無理です。
やはり身近な人間で新しい生活スタイルをしているのを知ったことで、自分の価値観や人生の選択肢も広がったと思います。
スタートアップのスピード感を実感
具体的に言えば、”自分の仕事の成果がすぐにビジネスに反映される感覚”です。
これはエンジニアリングのみの力ではなく、営業力やビジネスモデルもあっての結果ですが、最初にPoCから始まって顧客が1社、2社と順調に増えていきました。
また、開発しているサービスがテレビで取り上げられたこともあり、単純ですが胸を張る思いでした。
当時、本業の方ではPoCをやろうとして、なかなか顧客が見つからなかったり、見つかっても最終的には利益に繋がらなかったりと不完全燃焼な状態が続いていました。 そこには大企業ならではのスピード感の無さやリスクを回避しがちな姿勢が理由としてあったと思います。
そういった背景から本業より副業の方がやりがいがあったと思います。 何より契約先のスタートアップは本気で上場を目指してましたので、成功に対するモチベーションも高かったです。
自分のパフォーマンスを引き上げられた
人間、追い詰められないとなかなか動かないもので、 責任を課せられずに、プライベートの時間にここまで開発タスクをこなせなかったと思います。
自分は週8時間契約で、基本的に土曜日に副業のタスクをこなしていました。 たった一日ですが、それでも貴重な休日のうち一つを使ってしまうため、プライベートでやらなければならない雑務や手続きなどに手が回らなくなるフラストレーションはありました。
これは他の人も同じらしく、同じく副業で参加していたエンジニアやデザイナーの中にも、副業をやめて本業に集中することにした方や、社員としてそのスタートアップに参加することを決意した方もちらほら見られました。
一方で、生活の中でやらなければならないことや普段の過ごし方を、効率化したり、切り詰めたりすることで、より生産的に動けたことが一つの発見だったと思います。
実際、他の副業エンジニアの中には、本業で週5日勤務しつつ、副業で週24時間契約をしている方もいました。 どうやって時間を確保しているのか聞いたところ、土日で16時間確保し、残りの8時間は平日の朝か夜に働いているとのことでした。 なかなか真似できるものでもありませんが、それぐらい頑張っている人がいることを知れたのも、大きな刺激になりました。
私の知人には、夜9時に寝て朝3時に起き、個人事業を行っている人もいます。
副業やリスキリングが叫ばれていますが、それを成す上で必要不可欠なタイムマネージメントを考えるきっかけになったと思います。
なぜやめるのか?
ここまでポジティブに書いてきた副業をやめることにしたのは、本業で転職することになったためです。 転職先の企業が副業を許しておらず、フリーランスエンジニアの肩書は捨てることになりました。
今後
計らずも副業をやめることになってしまいましたが、逆に副業をやっていたがためにできなかったこともあります。
今回の副業中に求められたが、自分にスキルがなくできなかった技術分野
個人開発、書籍執筆など無形資産の形成
金融資産の形成
自身にスキルがなくできなかった技術開発は、主に機械学習周りの知見になります。 私はバリバリの機械学習エンジニアという訳ではありません。 しかし、今回の経験でどういったところに需要があるのか、機械学習アプリを運用する上でどのようなマネージメントが必要になるのかなど知ることができました。 これを機会に勉強したいと思っています。
二つ目の無形資産の形成は、エンジニアとしてやっておきたいことの一つですし、自己ブランディングも含んでいます。
副業はやめてしまいましたが、収益を得られないからこそできることもあります。
この書籍でも紹介されていますが、プロボノやNPO活動など、副業でなくても自身のスキルをアウトプットする手段はたくさんあります。
一応、2023年には個人開発で一つ目のプロダクトのリリースは達成しました。
しかし、まだまだ満足していません。これも収益を上げるところまでは成し遂げたいと思っています。
最後の金融資産の形成は、今までもやってきたのですが、インデックス投資に積み立てるだけのほったらかし運用です。
折しも新NISAが始まり、投資可能枠も大幅に拡大しました。副業収入が無くなることもあり、投資プランを再考したいと考えています。
まとめ
抽象的ですが、副業をやって最も良かったことの一つは、行動した分だけ自分の収入を増やせる感覚をつかめた点だと思っています。
私が社会人になったとき製造業、とりわけ電機業界は赤字にあえいでいました。 そのため長い間、給料はなかなか伸びず、個人の行動のみでビジネスを成長させ、収入を増やすことは難しいと思い込んでいました。
しかし、副業が解禁されて個人がビジネスをしやすくなったことで、 自身の仕事やキャリアのマネージメントを会社の枠組みを超えて考えるきっかけになりました。
一方で、労働集約型の仕事を本業と掛け持つのはなかなか厳しいというのも現実です。 知識集約型のビジネスで稼ぐ割合を増やしていくことを目指したいです。